2025.10.28

この記事を監修してくださった方
公益社団法人日本食品衛生協会
公益事業部 技術参与 黒﨑嘉子先生
飲食物が原因となって起こる食中毒などの健康被害を防止し、消費者の健康を守るため、食品等事業者に正しい食品衛生の知識を広めることを目的として、地域の保健所や食品製造業や飲食店等の人々と協力し、 食の安全を守るための活動を行っています。
目次
1. HACCPとは?2つの柱を知ろう
2. HACCP導入で得られるメリット
3. 飲食店のシーンで見るHACCPの基本
4. 衛生管理の全体像とHACCPの位置づけ
5. HACCPには2つのタイプがある
6. 今日からできる!手引書に沿った4ステップ導入法
7. 「罰則があるの?」HACCPを怠った場合のリスク
8. まとめ:HACCPは安心と信頼の基盤
9. HACCPの視点に立つ食品ラップ
HACCPは「HA」と「CCP」という考え方で成り立ちます。
- HA(Hazard Analysis:危害要因分析)...有害な菌や化学物質、硬質異物などの危険なものを洗い出す
- CCP(Critical Control Point:重要管理点)...危険なものから守るために「特に大切な工程」を定めて守る
つまり「どこに・どんな危険があるか」を見極め、大切な工程を「どうやって守るか」を決めて管理するのがHACCPです。

HACCP導入で以下のようなメリットがあります。
- 衛生管理のポイントが明確になり、効率的な衛生管理が可能
- スタッフ全員が同じ衛生ルールで作業が安定
- クレームや食中毒を未然に防止
- 記録があるため、問題発生時に迅速な原因究明が可能
- 消費者や取引先からの信頼が高まり、ブランド価値が向上
厨房でありがちな場面を想像してみましょう。
居酒屋でサラダと生肉を同じ包丁やまな板で切れば、食中毒のリスクが高まります。
HACCPは、こうした「事故の芽」を事前に見つけ、作業をルール化して防ぐ仕組みです。
実はHACCPは特別な作業ではなく、普段の業務を「見える化」することです。そのために、衛生管理計画を作成し、実施したことを記録に残していくことが大切です。
飲食店の一日の食材等管理の流れの例
- 開店前:納品食材の状態や保存温度が適切かチェック、従業員の健康チェックなど
- 仕込み:器具を分けて交差汚染を防止、適切な温度で保管など
- 営業中:メニューに応じた調理工程のチェック(食品の温度確認)
- 閉店後:翌日使用食材の準備・温度管理、店舗・器具等の清掃・洗浄・消毒等、衛生管理の実施記録の整理
飲食店等における衛生管理は、どんな施設でも行う「①一般的な衛生管理」と取り扱う食品に応じて行う「②HACCPに沿った衛生管理」の二つです。これらは、国際的にも食品衛生管理の標準で、車の両輪のように動かしていくことが大切です。
① 一般的な衛生管理: 施設設備等の作業環境の衛生、従事者の衛生などの一般的な衛生管理(整理・整とん・清掃・清潔・習慣の5S活動により行う)
② HACCPに沿った衛生管理:取り扱っている食品の特性に合わせた衛生管理(工程管理)

わが国のHACCPは、事業規模や業種により2つあります。
1. HACCPに基づく衛生管理...大規模事業者やと畜場、食鳥処理場が対象
2. HACCPの考え方を取り入れた衛生管理...飲食店や小規模な事業者等が対象
飲食店は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に該当します。

- 一般飲食店、喫茶店、居酒屋、レストラン
- 集団給食施設(学校給食・病院給食など)
- 惣菜製造業、パン製造業、菓子の製造販売、八百屋、精肉・鮮魚小売など
- 作業者50人未満の小規模な製造・加工等の事業場
出典:厚生労働省「HACCPに基づく衛生管理え」を元に加工して作成
HACCPを導入するとき、「具体的に何から始めればいいの?」と戸惑う方も多いでしょう。厚生労働省のHPには業種別団体が作成した手引書が掲載され、これに沿って実施すればよいのです。
小規模な飲食店の手引書でHACCPは4ステップで行うこととし、飲食店の毎日の作業にそのまま当てはめられます。開店前の納品チェックや仕込み、営業中の温度確認、閉店後の記録整理――こうした日常の流れ自体が、HACCPの実務フローになるのです。
出典:小規模な飲食店向けHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書
1. 衛生管理計画を作成する
2. 計画に基づき実施する
3. 実施したことを確認し、記録を取る
4. 定期的に記録を見直し、振り返りを実施する(必要に応じて衛生管理計画を改訂)
【危害要因の理解】一般衛生管理と重要管理のポイントを整理するため、お店で行う作業について何を(どこが)失敗するとお客様の健康を害することになるかを洗い出してポイントを押さえる「衛生管理計画」を作成します。
一般衛生管理のポイントとしては、納品された食材の確認、食材を保管する冷蔵庫・冷凍庫の温度確認、調理器具等の二次汚染・交差汚染の防止、従事者の衛生があげられます。
重要管理のポイントはメニューに応じ、調理工程中の食品の通過温度に着目してグループ化し、食中毒菌が増殖しやすい10℃から60℃の温度帯を何回通過するかなど、食中毒菌をやっつけるための加熱温度などを考慮して、調理工程における重要管理のポイントを整理して衛生管理計画を作成します。
また、必要に応じて上記の管理のやり方の詳細(手順書)を作成しましょう。
このように日常の業務フローに対して上記ステップに基づいて実施することができます。
HACCPを怠ると、当然、食中毒などの発生のリスクがあります。これまで食中毒を起こしたことがないから、これからも大丈夫、ということは絶対にありません。衛生管理が適切でないと、いつ食中毒が発生するかわかりません。また、異物の混入などが発生し、SNSで拡散されるかもしれません。
食中毒が発生すると、営業の禁止や停止の行政処分だけでなく、お客様への多大な補償、罰則なども発生します。これらの損失は決して少なくはありません。
衛生管理計画がなかったり、記録が不十分だと、保健所から指導を受けます。基本的に指導に沿って改善すれば問題ありませんが、指導に従わなかったり、内容に改善が見られないと、行政処分を受ける可能性があります。
さらにSNSの時代では「衛生管理を怠っていた」と拡散され、信用を一気に失う危険があります。
HACCPは何ら難しいものではなく、普段の衛生管理を整理して「見える化」する仕組みです。
飲食店にとっては:
- お客様を守り、自らも守る安心のルール
- スタッフのミスを防いで働きやすい環境
- 信頼されるブランドづくり
これらを支える強力な基盤になります。
この記事を読んで「できそうだ」と思った今こそがスタートのタイミングです。まずは手引書を参考もとにHACCPを取り組んでみてください。
出典:厚生労働省ホームページより
透明、青色、赤色の3種類のラインアップが揃う「キッチニスタラップ抗菌シリーズ」は、機抗菌剤配合によりラップ表面に付着した細菌の増殖を抑え、その効果は長時間持続します*。ハサップ インターナショナル*認証取得品です。
*ラップが触れない面や、既に細菌に汚染された食品には効果を期待することはできません。

「キッチニスタラップ抗菌」は、無機抗菌剤の配合により、ラップに付着した細菌の増殖を抑える効果が期待できます(食品に付着した食中毒菌を死滅させる効果を期待することはできません。あくまで衛生管理の補助としてご使用ください)。
製品情報:キッチニスタラップ抗菌
抗菌性能+ラップを青色(透明色)にした食品ラップ。青は食材に少ない色のため万一、食材や料理にラップ片が混入しても青いラップだと見つけやすい。厨房や製造現場でラップ破片が食品に混入し、そのまま流出するリスクを低減させます。食品調理工場、給食や介護施設、ホテルやレストランといった飲食店の厨房など、食の安全管理が求められる現場に最適です。

製品情報:キッチニスタラップ 抗菌ブルー
抗菌性能+ラップを赤色(透明色)にした食品ラップ。病院食・介護食や学校給食・保育園給食の衛生管理で、食物アレルギー対応食・制限食の識別や、加熱・非加熱調理食品の交差汚染、二次汚染を防止したい場合に「赤色」で明示して対策できます。取り扱い注意を促して目立たせる用途にも適しています。

製品情報:キッチニスタラップ 抗菌レッド
「キッチニスタラップ抗菌シリーズ」は、原材料、設計仕様、製造工程、食品への混入時の安全性、使用説明、表記の正確性などの様々な観点から評価を受け、HACCPにもとづく食品安全管理を採用している食品製造・加工の現場でご使用いただくことに適した安全な製品として、ラップフィルムとしては日本で初めてHACCP Internationalの認証を取得しています。
*ハサップ インターナショナル(HACCP International)
食品業界で使用される非食品の消耗資材、設備、サービスを対象に、食品安全のあらゆる角度から科学的にHACCPへの適合性、対応能力を評価し、認証を与える国際認証機関。